抽象添字記法、四脚場

WaldのGeneral Relativityを読んでいて、abstract index notation(抽象添字記法)の記法とか計量テンソルと正規直交基底の関係とかが自分の中であやふやなのでまとめる。

  1. 抽象添字記法

    1. 接ベクトル

      まず対象として計量テンソルと$n$次元実多様体の組み$(M,g)$を考える。 実多様体とは部分的に$n$次元実空間に写像できる集合のパッチワークのようなもので、 多様体上の任意の点$p$の周りでの$n$次元実空間への写像は"座標系"と呼ばれる。 つまり座標系$\psi(p)$は次のように表される。 \[ \psi: M \rightarrow \mathbb{R}^n. \] 多様体中の任意の点$p$近傍に対して接ベクトル空間$T_pM=V_p$を考えることができる。 接ベクトルとは、多様体上の点に対する関数を実数に写像するもので、ライプニッツ則、線形性などを満たすような方向微分を拡張したものである。 多様体上の$C^\infty$級関数集合(スカラー場)を$\mathcal{F}$と書くと、接ベクトル集合$V_p$は次の写像で表される。 \[ \mathcal{F}: M \rightarrow \mathbb{R},~~~~ V_p:\mathcal{F} \rightarrow \mathbb{R}. \] ここで、ある座標系$\psi:M\rightarrow\mathbb{R}^n$と 関数$f:M\rightarrow\mathbb{R}\in\mathcal{F}$を考えると、 ここから引き戻し$f\circ \psi^{-1}:\mathbb{R}^n \rightarrow \mathbb{R}$が得られる。 ここから$n$個の独立な接ベクトル$X_\mu: \mathcal{F} \rightarrow \mathbb{R}$が次のように構成できる。 \[ X_\mu(f)=\left. \frac{\partial}{\partial x^\mu} f\circ \psi^{-1}(x) \right|_{x^\mu=\psi^\mu(p)}. \] 任意の接ベクトルはこれらを基底ベクトルとした線型結合によって表すことができる。 $v^a$で接ベクトルの要素を表すと、次のように書ける。 \[ v^a=\sum_\mu v^\mu (X_\mu)^a \in V_p. \] ここで、$v^\mu \in \mathbb{R}$はベクトルのこの基底での成分と呼ばれる部分であり、 $(X_\mu)^a=X_\mu(\cdot)$は適当な座標系に対応した$n$個の独立な基底ベクトルである。 小文字のアルファベット$(a,b,c \cdots )$は抽象添字記法の添字で、ギリシャ文字$(\mu,\nu,\rho\cdots)$は多様体の任意の座標系での空間の添字とする。 (つまりこの段階での抽象添字記法は$v^a \in V_p$を明示しているに過ぎない。) 基底のとり方は座標系のとり方と一対一に対応する。 座標系$x^\mu(p)=\psi(p)$の基底であることを強調して$(X_\mu)^a=(\frac{\partial}{\partial x^\mu})^a$と書くこともできる。その場合ベクトルは \[ v^a=\sum_\mu v^\mu (\frac{d}{dx^\mu})^a \] と表される。 \((\partial_\mu)^a\)と書くこともある。通常、座標の添字と抽象添字記法の添字の位置は互い違いになっているのが自然だ。\(g_{ab}\)で\(V^a\)と\(V_a\)を行き来できるようになるとその限りでなくなる。 ここで接ベクトル$v^a,w^a\in V_p$に対して交換子を次のように定義する。 \[ [v,u](f) \equiv v(w(f))-w(v(f)) \in V_p. \] 基底ベクトルの交換子は恒等的にゼロとなることを示せる。 \[ [X_\mu,X_\nu](f) =X_\mu(X_\nu(f))-X_\nu(X_\mu(f)) \]\[ =\partial_\mu \partial_\nu f(x)-\partial_\nu \partial_\mu f(x)=0. \] ここで$f(x)=f(p=\psi^{-1}(x))$。 逆に交換子がゼロであることが座標基底の満たすべき条件となる。

    2. 双対ベクトル

      接ベクトル空間$T_pM=V_p$に対して共役となる双対ベクトル空間$T_p^*M=V_p^*$(余接ベクトル空間)を考えることができる。 双対ベクトルは接ベクトルを実数に写像し、同様に接ベクトルは双対ベクトルを実数に写像する。 つまり \[ V_p^*:V_p \mapsto \mathbb{R},~~~~V_p:V_p^* \mapsto \mathbb{R}. \] 任意の双対ベクトルもまた$n$個の基底の線型結合で表すことができる。 双対ベクトルの要素を$w_a$と書くと \[ w_a=\sum_\mu w_\mu (X^\mu)_a\in V_p^*, \] と表せる。 ここで$w_\mu\in\mathbb{R}$は双対ベクトルの成分、$\{(X^\mu)_a\}$は適当な基底である。 座標系$x^\mu(p)=\psi(p)$を明示する場合は$(X^\mu)_a=(dx^\mu)_a$と書かれる。 微分形式との対応から双対ベクトルのことを一形式(1-form)と呼ぶこともある。 \[ w_a=\sum_\mu w_\mu (dx^\mu)_a. \] また、抽象添字記法では双対ベクトルは下付きの添字を用いて$w_a\in V_p^*$を明示するものとする。
    3. 縮約

      双対ベクトルはベクトル一つをとって実数に写像し、 接ベクトルもまた双対ベクトル一つをとって実数に写像するものであった。 ここから、抽象添字記法について双対ベクトルの下付き添字を引数の接ベクトルに対応するスロット、 接ベクトル上付き添字を引数の双対ベクトルに対応するスロットとみることもできる。 接ベクトルと双対ベクトルを作用させて実数にすることを縮約(contract)と呼び、次のように書く。 $^\forall v^a \in V_p$、$^\forall w_a \in V_p^*$に対して \[ v^a w_a=w_a v^a \in\mathbb{R} \] ここで、接ベクトル空間の基底とその双対ベクトル空間の基底との間には次の関係を要請する。 ここで要請しているのは接(双対)ベクトル空間の基底が正規直交であれということではない。実際、一般の基底は正規直交ではない。それにまだベクトル空間でのノルムを定義していない。 \[ (X_\mu)^a(X^\nu)_a=(X^\mu)_a(X_\nu)^a={\delta^\nu}_{\mu} \] ここで${\delta^\nu}_{\mu}$はクロネッカーのデルタ記号である。 こうしておくと接ベクトルと双対ベクトルの縮約はその成分で表せて \[ v^a w_a =\sum_{\mu,\nu} v^\mu w_\nu (X_\mu)^a(X^\nu)_a =\sum_{\mu,\nu} v^\mu w_\nu {\delta^\nu}_{\mu} =\sum_\mu v^\mu w_\mu, \] と各成分の和となる。 また、接(双対)ベクトルに対し共役な基底との縮約をとることは、その成分を抜き出すことに対応する。 \[ v^a (X^\mu)_a = v^\mu. \]
    4. テンソル

      複数の接(双対)ベクトルの直積(テンソル積)をとったものを考えることもできる。 そうして出来たものをテンソルと呼ぶ。 たとえば接ベクトル2つの直積は \[ \mathcal{T}(2,0)\equiv V_p\otimes V_p, \]\[ \mathcal{T}(2,0): V_p^*,V_p^*\rightarrow \mathbb{R}, \]\[ T^{ab}=\sum_{\mu,\nu}T^{\mu\nu}(X_\mu)^a\otimes(X_\nu)^b\in\mathcal{T}(2,0), \] となりこれは2階のテンソルと呼ばれる。 基底の間の直積記号はしばしば省略される。 また、次のようなものも考えられる。 \[ \mathcal{T}(3,2)\equiv V_p\otimes V_p\otimes V_p\otimes V_p^*\otimes V_p^*, \]\[ \mathcal{T}(3,2):V_p^*,V_p^*,V_p^*,V_p,V_p \rightarrow \mathbb{R}, \]\[ {T^{abc}}_{de}=\sum {T^{\mu\nu\rho}}_{\lambda\kappa} (X_\mu)^a\otimes(X_\nu)^b\otimes(X_\rho)^c\otimes (X^\lambda)_d\otimes(X^\kappa)_e\in\mathcal{T}(3,2). \] こうしたものは混合テンソルと呼ばれる。 一般にk個の接ベクトル空間とl個の双対ベクトル空間の直積からなるテンソルをここでは(k,l)テンソルと呼び、 その集合を$\mathcal{T}(k,l)$と表すことにする。
  2. 計量テンソル

    (0,2)テンソルは2つの接ベクトルを引数にとれる。 この内1つを決めてしまうと、これは1つの接ベクトルを引数にとる双対ベクトルと同一視できる。 よって(0,2)テンソルは接ベクトルと双対ベクトルの間の変換を担える。 このような(0,2)テンソルとして、自然なものが計量テンソル$g_{ab}$である。 計量テンソルは二階の双対テンソルで対称、非退化といった性質を持つ。 \[ g_{ab}=\sum_{\mu,\nu} g_{\mu\nu}(X^\mu)_a(X^\nu)_b \] 基底を\((dx^\mu)_a\)と書いて次のような表現もされる。 \[ (ds^2)_{ab}=\sum_{\mu,\nu} g_{\mu\nu}(dx^\mu)_a(dx^\nu)_b \] この表式は微小変位の意味を含んでいる。 こう書く時普通抽象添字記法の足は書かない。これが微小変位であるということと\(g_{ab}\)がノルムの定義になることは対応している。 計量テンソルによって接ベクトルは双対ベクトルに変換される。 それは抽象添字記法の添字を上げ下げすることで表現する。 \[ v_b\equiv v^ag_{ab}=\sum_{\mu,\nu,\sigma}v^\mu g_{\nu\sigma}(X_\mu)^a(X^\nu)_a(X^\sigma)_b=\sum_\sigma \sum_\mu v^\mu g_{\mu \sigma}(X^\sigma)_b \in V_b \] 同様に双対ベクトルから接ベクトルへの変換はこの逆変換で与えられ、それを担う二階のテンソルは\(g^{ab}\)と表される。 \[ g^{ab}g_{bc}={\delta^a}_c, \]\[ v^b\equiv v_ag^{ab}\in V^b. \] ここで\({\delta^a}_b\)は次のような恒等演算子のように振る舞う混合テンソルである。 \[ {\delta^a}_b v^b=v^a, \]\[ {\delta^a}_b=\sum_{\mu,\nu}{\delta^\mu}_{\nu}(X_\mu)^a(X^\nu)_b. \] 接ベクトルのノルムはこの軽量テンソルによって作られた双対ベクトルとの縮約で定義される。 \[ \|v\|^2=(v,v)\equiv v^a v_a = g_{ab} v^a v^b = \sum_{\mu,\nu} g_{\mu\nu} v^\mu v^\nu \] (Lorentz多様体では)接ベクトルのノルムは必ずしも正定値では無い。 また、接ベクトルの基底についても必ずしも正規直交化されているとは限らず、計量の成分は基底同士の内積に対応する。 \[ (X_\mu,X_\nu)=(X_\mu)^a(X_\nu)_a=g_{ab}(X_\mu)^a(X_\mu)^b=g_{\mu\nu} \] 同様に上付き成分は双対ベクトルの基底同士の内積の値に対応する。 \[ (X^\mu,X^\nu)=(X^\mu)^a(X^\nu)_a=g^{ab}(X^\mu)_a(X^\mu)_b=g^{\mu\nu} \] 計量の成分は双対(接)ベクトルにした接(双対)ベクトルの基底の成分と言うこともできる。 \[ (X_\mu)_a=\sum_\nu g_{\mu\nu}(X^\nu)_a, \]\[ (X^\mu)^a=\sum_\nu g^{\mu\nu}(X_\nu)^a. \]
  3. 共変微分

    多様体上での微分演算を考える。 微分演算子$\nabla_a $には線形性、ライプニッツ則に加えて、接ベクトルの方向微分としてのスカラー場への関数適用 \[ v^a\nabla_a f=v(f) \] を要請する。 ここから接ベクトルの交換子は \[ [v,u](f)=v(u(f))-u(v(f)), \]\[ [v,u]^a\nabla_a f =v^b \nabla_b u^a\nabla_a f - u^b \nabla_b v^a\nabla_a f \]\[ =(v^b \nabla_b u^a - u^b \nabla_b v^a)\nabla_a f, \]\[ \therefore~ [v,u]^a=v^b \nabla_b u^a - u^b \nabla_b v^a, \] と表される。 また、次のトーションフリー条件もしばしば仮定される。 \[ \nabla_{[a}\nabla_{b]}f=0 \] 微分演算子としては座標基底$(dx^\mu)_a$の通常微分$\partial_a $も含まれる。 これは、一般の(k,l)テンソルに対して \[ \partial_c {T^{A}}_{B}= \sum_{\lambda,M,N} \frac{\partial {T^M}_N}{\partial x^\lambda} (dx^\lambda)_c (\frac{\partial}{\partial x^M})^A (dx^N)_B \] $A$などの大文字の添字は$\{a_1,a_2,\cdots,a_k\}$といったつもりで書いた。 また通常微分$\partial_a$と基底$(\partial_\mu)^a$は似ているが別のものであり、 縮約を取った時に$(\partial_\mu)^a\partial_a=\partial_\mu$となっている。 となるもので、接ベクトルのスカラー場への関数適用はこの場合方向微分そのものになる。 \[ v(f)=v^a \partial_a f = \sum_\mu v^\mu\frac{\partial f(x)}{\partial x^\mu} \] 任意の微分演算子$\nabla_a$と通常微分$\partial_a$との間の関係を見ると、スカラー場に対しては同様に振る舞う。 一方、一形式(双対ベクトル)に対しては、(0,2)テンソル同士を繋ぐ線形の関係なので、その差はある(1,2)テンソルでもって繋がれることが分かる。 この(1,2)テンソルを${\Gamma^c}_{ab}$と書くと \[ \nabla_a w_b=\partial_a w_b - {\Gamma^c}_{ab}w_c. \] この\({\Gamma^c}_{ab}\)のことをクリストッフェル記号という。 座標成分で表せば \[ \nabla_a w_b= \sum \left[ \partial_\mu w_\nu - {\Gamma^\lambda}_{\mu\nu} w_\lambda \right](dx^\mu)_a (dx^\nu)_b, \]\[ \therefore~ \nabla_\mu w_\nu= \partial_\mu w_\nu - {\Gamma^\lambda}_{\mu\nu} w_\lambda. \] と表せる。 またトーションフリーの性質から\({\Gamma^c}_{ab}={\Gamma^c}_{ba}\)が得られる。 すると一形式に対しては反対称化された微分は通常微分と常に同じになることが分かる。 反対称化は$T^{[ab]}=(T^{ab}-T^{ba})/2$、 対称化は$T^{(ab)}=(T^{ab}+T^{ba})/2$で、 任意のテンソルは$T^{ab}=T^{[ab]}+T^{(ab)}$といつでも対称成分と反対称成分に分解できる。 \[ \nabla_{[a}\omega_{b]}=\partial_{[a}\omega_{b]} \] また、ライプニッツ則から接ベクトルに対しては \[ \nabla_a v^b=\partial_a v^b + {\Gamma^b}_{ac}v^c \] と書ける。 微分演算子は無数に存在するが、計量テンソルに対して \[ \nabla_c g_{ab}=0 \] となるものを選ぶと一意に決まる。(compatible条件) これを計量と定義された共変微分と呼ぶ。 共変微分を使って時空の曲がり方を表す量を定義できる。 Riemann曲率テンソルは \[ {R_{abc}}^d\omega_d=2\nabla_{[a}\nabla_{b]}\omega_c \] で与えられる。
  4. 正規直行基底

    1. 四脚場

      実際の計算の上では基底は正規直交であるのが好ましい。そこで計量の成分について \[ (e_\alpha,e_\beta)=(e_\alpha)^a(e_\beta)_a=\eta_{\alpha\beta} \]\[ \eta_{\alpha\beta}=(-1,+1,+1,+1,\cdots) \] となるようにとった基底$\{(e^\alpha)_a\}$のことを正規直交基底と呼ぶ。 (ここではこの基底の成分であることを強調して空間の添字に$\alpha,\beta,\gamma,\cdots$を用いることにする。) 基底の内積は計量の成分であったため、次のようにも書ける。 \[ g_{ab}=\sum_{\alpha,\beta}\eta_{\alpha\beta}(e^\alpha)_a(e^\beta)_b. \] 正規直行基底は多様体上の点$p$で局所慣性系となるフレームに対応するのでフレーム基底(frame basis)とも呼ばれる。 よってその成分に対する添字の上げ下げは特殊相対論の時と同じように$\eta_{\alpha\beta}$に従って符号を変えるだけで良い。 実際、 \[ v_\alpha =v_a(e_\alpha)^a =v^b g_{ba}(e_\alpha)^a \]\[ =\sum v^\beta (e_\beta)^b \eta_{\gamma\epsilon}(e^\gamma)_b(e^\epsilon)_a(e_\alpha)^a \]\[ =\sum v^\beta \eta_{\gamma\epsilon} {\delta^\gamma}_\beta{\delta^\epsilon}_\alpha =\sum v^\beta \eta_{\beta\alpha}. \] となり確かに特殊相対論の時と同じになる。 接ベクトルの成分を正規直行基底で書き表すと \[ v^a=\sum v^\mu (\partial_\mu)^a =\sum v^\mu {e^\alpha}_\mu (e_\alpha)^a. \] ここで \[ {e^\alpha}_\mu =(e^\alpha,\partial_\mu) =(e^\alpha)_a (\partial_\mu)^a, \] である。 よって正規直行基底での成分を$v^\alpha$と表すと \[ v^\alpha=\sum_\mu v^\mu {e^\alpha}_\mu, \] と書くことができる。 ${e^\alpha}_\mu$は$n\times n$の成分を持つ行列であり、 これのことを$n=4$では四脚場(tetrad,vierbein)、より一般には多脚場(vielbein)と呼ぶ。 多脚場は正規直行基底を座標基底で表したときの成分であるため正規直行基底と同様に \[ \sum_\mu {e_\alpha}^\mu e_{\beta\mu} = \eta_{\alpha\beta}, \]\[ g_{\mu\nu}=\sum_{\alpha,\beta} \eta_{\alpha\beta}{e^\alpha}_\mu{e^\beta}_\nu, \] を満たす。
    2. スピン接続

      一形式の共変微分について正規直行基底の成分で表そう。 基底と縮約をとることはその成分を意味するので次を計算する。 \[ \nabla_\mu w_\alpha =(\partial_\mu)^a(e_\alpha)^b \nabla_a w_b \]\[ =(\partial_\mu)^a(e_\alpha)^b \nabla_a \sum_\beta w_\beta (e^\beta)_b \]\[ =(\partial_\mu)^a(e_\alpha)^b \sum_\beta \left[ (\partial_a w_\beta) (e^\beta)_b +w_\beta \nabla_a (e^\beta)_b \right] \]\[ = \frac{\partial w_\alpha}{\partial x^\mu} + \sum_\beta w_\beta (\partial_\mu)^a(e_\alpha)^b \nabla_a (e^\beta)_b. \] ここで座標基底でのクリストッフェル記号に当たる接続の部分は、 (スピノルの共変微分を考えた時の接続として現れることから)スピン接続と呼ばれ次で表される。 \[ {\omega_{\mu\alpha}}^\beta \equiv (\partial_\mu)^a(e_\alpha)^b\nabla_a (e^\beta)_b \] 座標基底を取る前の双対ベクトルは接続一形式と呼ばれる。 \[ \omega_{a\alpha\beta} \equiv (e_\alpha)^b \nabla_a (e_\beta)_b =\sum_\gamma \eta_{\beta\gamma} (e_\alpha)^b\nabla_a (e^\gamma)_b. \] すべて正規直行基底の成分にしたものはRicci回転係数と呼ばれる。(Wald, p.50) \[ \omega_{\gamma\alpha\beta} \equiv (e_\gamma)^a(e_\alpha)^b \nabla_a (e_\beta)_b. \] 接続一形式は$\alpha,\beta$の添字について反対称であることがcompatible条件$\nabla_c g_{ab}=0$から示せる。 \[ 0=\nabla_a \eta_{\alpha\beta} =\nabla_a (e_\alpha)^b (e_\beta)_b =(e_\alpha)^b\nabla_a(e_\beta)_b+(e_\beta)_b\nabla_a(e_\alpha)^b \]\[ =(e_\alpha)^b\nabla_a(e_\beta)_b+(e_\beta)^b\nabla_a(e_\alpha)_b =\omega_{a\alpha\beta}+\omega_{a\beta\alpha}. \] これらから正規直行基底での一形式の共変微分は \[ \nabla_\mu w_\alpha= \frac{\partial w_\alpha}{\partial x^\mu} +{\omega_{\mu\alpha}}^\beta w_\beta = \frac{\partial w_\alpha}{\partial x^\mu} -{{\omega_\mu}^\beta}_\alpha w_\beta, \] と表せる。 クリストッフェル記号とスピン接続の関係を見よう。 まず座標基底で表すと、 \[ \nabla_a w_b =\sum (\partial_\mu w_\nu-{\Gamma^\rho}_{\mu\nu}w_\rho)(dx^\mu)_a(dx^\nu)_b. \] $\alpha,\beta,\cdots$と$\mu,\nu,\cdots$の添字の間が多脚場${e^\alpha}_\mu$で繋がれると思うと、 \[ \nabla_a w_b =\sum[ \partial_\mu({e^\beta}_\nu w_\beta) -{\Gamma^\rho}_{\mu\nu}{e^\beta}_\rho w_\beta ](dx^\mu)_a {e_\alpha}^\nu (e^\alpha)_b \]\[ =\sum[ {e^\beta}_\nu \partial_\mu w_\beta +w_\beta \partial_\mu {e^\beta}_\nu -{\Gamma^\rho}_{\mu\nu}{e^\beta}_\rho w_\beta ]{e_\beta}^\nu (dx^\mu)_a(e^\alpha)_b \]\[ =\sum[ \partial_\mu w_\alpha +w_\beta( {e_\alpha}^\nu\partial_\mu {e^\beta}_\nu -{\Gamma^\rho}_{\mu\nu}{e^\beta}_\rho {e_\alpha}^\nu ) ](dx^\mu)_a(e^\alpha)_b. \] よって \[ \nabla_\mu w_\alpha =\partial_\mu w_\alpha +\sum_{\beta,\nu,\rho} w_\beta( {e_\alpha}^\nu\partial_\mu {e^\beta}_\nu -{\Gamma^\rho}_{\mu\nu}{e^\beta}_\rho {e_\alpha}^\nu ), \] と表せる。 スピン接続による表式との比較から \[ {\omega_{\mu\alpha}}^\beta =\sum_{\nu,\rho} ( {e_\alpha}^\nu\partial_\mu {e^\beta}_\nu -{\Gamma^\rho}_{\mu\nu}{e^\beta}_\rho {e_\alpha}^\nu ), \] となる。 ここから次が示せる。 \[ \nabla_\mu {e^\alpha}_\nu =\partial_\mu {e^\alpha}_\nu +\sum_{\beta,\rho} ( -{\omega_{\mu\beta}}^\alpha {e^\beta}_\nu -{\Gamma^\rho}_{\mu\nu} {e^\alpha}_\rho ) \]\[ =\partial_\mu {e^\alpha}_\nu +\sum_{\beta,\rho,\lambda} [ -( {e_\beta}^\rho\partial_\mu {e^\alpha}_\rho -{\Gamma^\rho}_{\mu\lambda}{e^\alpha}_\rho {e_\beta}^\lambda ){e^\beta}_\nu -{\Gamma^\rho}_{\mu\nu} {e^\alpha}_\rho ] =0. \] これは四脚場公準(tetrad postulate)と呼ばれ、compatible条件やトーションフリーを仮定せずとも必ず成り立つ。 スピン接続は基底の共変微分をとったものとして、 座標基底でのクリストッフェル記号に対応するものとなる。 実際、座標基底でのクリストッフェル記号も \[ (\partial_\nu)^b (\partial_\mu)^a \nabla_a(dx^\rho)_b =(\partial_\nu)^b (\partial_\mu)^a \left[ \partial_a(dx^\rho)_b-{\Gamma^c}_{ab}(dx^\rho)_c \right] \]\[ =-(\partial_\nu)^b (\partial_\mu)^a {\Gamma^c}_{ab}(dx^\rho)_c =-{\Gamma^\rho}_{\mu\nu}, \] となっている。 スピン接続を用いるとRiemanテンソルの成分は \[ R_{\mu\nu ab}=2\left( \nabla_{[a}\omega_{b]\mu\nu}-\sum_{\lambda,\sigma}\eta^{\lambda\sigma}\omega_{[a|\lambda\mu}\omega_{|b]\sigma\nu} \right) \] で計算できる。

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