Conformal Field Theory 共形場理論
弦理論の初歩としての二次元CFTの基礎をまとめる。 主参考文献: Ginsparg.
共形変換
共形変換とは計量テンソルに対する次の変換を指す。 \[ g_{\mu\nu}\rightarrow g'_{\mu\nu}(x') =\Omega(x)^{-2}g_{\mu\nu}(x) =e^{2\omega(x)}g_{\mu\nu}(x). \] ここで$\Omega(x)$は任意の滑らかな関数。 $\Omega(x)=1$の周りで展開できる場合には最右辺のWeyl変換の形にも書くことができる。 共形変換では次で表されるベクトル$u,v$間の角度が保存される。 \[ \cos\theta =\frac{u\cdot v}{\sqrt{u^2 v^2}} =\frac{g_{\mu\nu}u^\mu v^\nu}{\sqrt{g_{\mu\nu}u^{\mu}u^{\nu} g_{\rho\lambda}v^{\rho}v^ {\lambda}}}. \]
今、座標変換によって誘起される共形変換、共形座標変換を考える。 平坦な時空において座標の微小変換$x^\mu\rightarrow x'\mu=x^\mu+\epsilon^\mu(x)$を考えると、線素は次のように変換される。 \[ \begin{aligned} \dd s^2=\eta_{\mu\nu}\dd x^\mu \dd x^\nu &\rightarrow \eta_{\mu\nu}(\dd x^\mu+\dd\epsilon^\mu)(\dd x^\nu+\dd\epsilon^\nu)\\ &=\eta_{\mu\nu}(\dd x^\mu \dd x^\nu + \dd\epsilon^\mu \dd x^\nu + \dd\epsilon^\nu \dd x^\mu )\\ &=(\eta_{\mu\nu}+\partial_\mu\epsilon_\nu+\partial_\nu\epsilon_\mu)dx^{\mu}dx^{\nu} \equiv \eta'_{\mu\nu}\dd x^\mu\dd x^\nu. \end{aligned} \] これが共形変換$\eta_{\mu\nu}\rightarrow \eta'_{\mu\nu}=\Omega(x)\eta_{\mu\nu}$となるには余分な項が$\eta_{\mu\nu}$に比例する必要がある。 比例係数はトレースから決定することができるので \[ \partial_\mu\epsilon_\nu+\partial_\nu\epsilon_\mu= \frac{2}{d}(\partial\cdot \epsilon)\eta_{\mu\nu}, \] を得る。 この方程式に$\partial_\rho \partial^\nu$を縮約させると \[ \begin{gathered} \partial_\rho \partial_\mu (\partial\cdot\epsilon) +\partial_\rho \partial^2 \epsilon_\mu =\frac{2}{d} \partial_\rho \partial_\mu (\partial\cdot\epsilon)\\ d\partial^2 \partial_\rho \epsilon_\mu +(d-2)\partial_\rho \partial_\mu (\partial\cdot\epsilon)=0. \end{gathered} \] 対称部分をとって \[ d\partial^2 \partial_{(\rho} \epsilon_{\mu)} +(d-2)\partial_\rho \partial_\mu (\partial\cdot\epsilon)=0, \]\[ \partial^2 (\partial\cdot\epsilon)\eta_{\mu\nu} +(d-2)\partial_\rho \partial_\mu (\partial\cdot\epsilon)=0. \] 次のようにも書ける。 \[ [\eta_{\mu\nu}\partial^2+(d-2)\partial_\mu\partial_\nu](\partial\cdot\epsilon)=0. \] よって共形座標変換はこのKilling方程式を満たす微小座標変換 $x^\mu\rightarrow x^\mu+\epsilon^\mu(x)$によって表さられ、 計量は平坦な時空から次のように共形変換される。 \[ \eta_{\mu\nu}\rightarrow (1+\frac{2}{d}(\partial\cdot\epsilon))\eta_{\mu\nu}. \] Weyl変換と対応させると$\omega(x)=(1/d)\partial\cdot\epsilon(x)$となる。 共形場理論で興味があるのはこうした変換であるため、共形座標変換のことを単に共形変換と呼ぶことが多い。
$d>2$においてKilling方程式から、全体として3階の微分項のみで消えなければならないので、解はせいぜい座標の二次までで構成される。 まとめて表すと \[ \epsilon^{\mu}(x)=a^\mu+{\omega^\mu}_\nu x^\nu+\lambda x^\mu+b^{\mu}x^2-2(b\cdot x)x^{\mu}. \] となる。各変換について表に記した。変換のパラメータは群の生成子にそれぞれ対応する。
表: 共形変換を誘起する座標変換
座標変換 $\epsilon^\mu(x)$ $\omega(x)$ 並進 $a^{\mu}$ $0$ ローレンツ変換 ${\omega^\mu}_\nu x^{\nu}$ $0$ スケール変換 $\lambda x^\mu$ $\lambda$ 特殊共形変換(SCT) $b^{\mu}x^2-2(b\cdot x)x^{\mu}$ $-2(b\cdot x)$ 微小変換を積分して有限の変換として表す。並進とローレンツ変換は合わせてポアンカレ変換に相当する。 \[ x'^\mu={\Lambda^\mu}_\nu x^\nu + a^\mu. \] また、スケール変換は$x'=\lambda x$となる。 特殊共形変換は次の形となる。 \[ x'^\mu=\frac{x^\mu+b^\mu x^2}{1+b\cdot x+b^2x^2}. \] $b$で微分すれば微小変換に帰着することを確かめられる。 SCTの変換式から次が得られる。 \[ \frac{x'^\mu}{x'^2}=\frac{x^\mu}{x^2}+b^\mu. \] ここで新たな変換としてinversionが現れる。 これは次の座標変換で誘起される共形変換である。 \[ x'^\mu=\frac{x^\mu}{x^2},~~\Omega(x)=x^2. \] この座標変換は恒等変換近傍で展開できないのでKilling方程式の解としては直接現れなかった。 しかしSCTの変換式を見ると、inversionしてから$b^\mu$並進しもう一度inversionすると$b^\mu$のSCTと等しくなることが分かる。
複素座標による表現
$d=2$で$g_{\mu\nu}=\delta_{\mu\nu}$の Euclidean 計量を考えると、Killing方程式から \[ \partial_0\epsilon_1=-\partial_1\epsilon_0,~~ \partial_0\epsilon_0=\partial_1\epsilon_1 \] が得られる。 これは座標$z=x^0+ix^1$に対する$\epsilon=\epsilon_0+i\epsilon_1$についてのCauchy-Riemannの方程式となっており、 $z$に対して座標変換$z\rightarrow z'=z+\epsilon(z)$が正則(holomorphic)であることを意味する。 (複素共役を取った組に対しても同様。) よってここでは座標を複素平面にとって$d=2$のCFTを調べていく。 実座標との対応は \[ z=x^0+ix^1,~~~ \bar{z}=x^0-ix^1, \]\[ \partial_z=\partial=(\partial_0-i\partial_1)/2,~~~ \partial_{\bar{z}}=\bar{\partial}=(\partial_0+i\partial_1)/2, \]\[ x^0=(z+\bar{z})/2,~~~ x^1=-i(z-\bar{z})/2, \]\[ \partial_0=\partial+\bar{\partial},~~~ \partial_1=-i(\partial-\bar{\partial}), \]\[ \dd s^2=(\dd x^0)^2+(\dd x^1)^2 =\frac{1}{2}(\dd z\dd\bar{z} +\dd\bar{z}\dd z), \]\[ \dd x^0 \dd x^1=\sqrt{\det g}\dd z \dd\bar{z}=\frac{\dd z \dd\bar{z}}{2}, \] となる。 **デルタ関数や微分を自然にしようとすると計量はこうなる。 ベクトル、反変ベクトルの関係式は座標、微分の関係式と同様に書ける。 計量からベクトルの複素座標の足の上下についても次のように関係づく。 \[ v_z=g_{z\mu}v^\mu=\frac{1}{2}v^{\bar{z}},~~~ v_{\bar{z}}=\frac{1}{2}v^z. \] $z$の言葉で改めて書き直すと、共形変換とは \[ z\rightarrow z'=f(z),~~\bar{z}\rightarrow \bar{z}'=\bar{f}(\bar{z}) \] の座標変換の下で \[ \dd s^2=\dd z\dd\bar{z}\rightarrow\Omega(z,\bar{z})^{-2}\dd z\dd\bar{z} \] と変換するものを指す。前述したように、$d=2$の場合$f$が正則関数でありさえすれば常にこれは成り立っている。
大域的な共形変換を複素表示で表してみる。 並進 $z'=z+a,(a\in\mathbb{C})$, スケール $z'=\lambda z,(\lambda\in\mathbb{R})$, 回転 $z'=e^{i\theta} z,(\theta\in\mathbb{R})$, SCT ???,
座標の微小変分$\epsilon(z)$は正則であるので次のようにLorant展開することができる。 \[ \epsilon(z)=-\sum\epsilon_n z^{n+1}. \] この時、共形変換群の生成子$l_n$とすると、 \[ z'=e^{\sum \epsilon_n l_n}z \approx (1+\sum \epsilon_n l_n)z, \] であるので \[ l_n\equiv-z^{n+1}\partial_z \] と表すことができる。 ($\bar{z}$についても同様に$\bar{l}_n$が与えられる。) ここから生成子の満たす代数は次のようになる。 \[ [l_n,l_m]=(m-n)l_{m+n},~~~ [\bar{l}_n,\bar{l}_m]=(m-n)\bar{l}_{m+n},~~~ [l_n,\bar{l}_m]=0. \]
代数の形から、$n=-1,0,+1$は次の部分代数を構成することが分かる。 \[ [l_+,l_-]=-2l_{0},~~~ [l_0,l_+]=l_+,~~~ [l_0,l_-]=-l_-, \]\[ [l_0,l_0]=[l_+,l_+]=[l_-,l_-]=0. \] ここで$l_+\equiv l_{1},l_-\equiv l_{-1}$である。 この部分代数は特殊線形変換代数$\mathfrak{sl}(2,\mathbb{R})$に等しい。 共役と合わせると$\mathfrak{sl}(2,\mathbb{R})\oplus\mathfrak{sl}(2,\mathbb{R})=\mathfrak{sl}(2,\mathbb{C})$の代数を構成する。 大域的共形変換群は$SL(2,\mathbb{C})$で表されるため、これはこの部分群に対応している。 また、各変換の生成子は次のように対応することが分かる。\cite{ginsparg} \[ \begin{aligned} &\text{(並進)}& l_-&=-\partial_z,\\ &\text{(スケール変換)}& l_0+\bar{l}_0&=-z\partial-\bar{z}\bar{\partial},\\ &\text{(回転)}& i(l_0-\bar{l}_0)&=-iz\partial+i\bar{z}\bar{\partial},\\ &\text{(SCT)}& l_{+}&=-z^2\partial. \end{aligned} \]
CFTの古典的性質
共形場理論
今、スカラー場$\phi$を含む理論を考える。 理論を共形変換の元に不変にできる時、これを共形場理論と呼ぶ。 この時、次のような変換性を持つ場をconformal dimentionが$\Delta$の quasi-primary場と呼ぶ。 \[ \phi(x)\rightarrow \left|\pdv{x'^\mu}{x^\nu}\right|^{\Delta/d}\phi(x'). \] $x'=x+\epsilon(x)$の微小変換での変化分は \[ \phi'(x') =\left|{\delta^\mu}_\nu+\partial_\nu\epsilon^\mu\right|^{\Delta/d}[\phi(x)+\epsilon^\mu\partial_\mu\phi(x)] \approx (1+\frac{\Delta}{d}\partial_\mu\epsilon^\mu) (1+\epsilon^\mu\partial_\mu)\phi(x), \] ここで$|1+M|\approx1+\mathrm{tr}M$を使った。よって \[ \delta_\epsilon \phi(x) =\left( \frac{\Delta}{d}\partial_\mu\epsilon^\mu +\epsilon^\mu\partial_\mu \right)\phi(x). \] $d=2$の複素座標では \[ \phi(z,\bar{z}) \rightarrow \left(\pdv{z'}{z}\right)^h \left(\pdv{\bar{z}'}{\bar{z}}\right)^{\bar{h}} \phi(z',\bar{z}'). \] このような場をconformal weightが$(h,\bar{h})$のprimary場と呼ぶ。\cite{ginsparg}\cite{erdmenger} $\Delta=h+\bar{h}$であり、$s=h-\bar{h}$はスピンに対応する。 微小変換$z'=z+\epsilon$を考えると \[ \delta_\epsilon \phi(x)= (h\partial\epsilon+\epsilon\partial +\bar{h}\bar{\partial}\bar{\epsilon}+\bar{\epsilon}\bar{\partial} )\phi(z,\bar{z}), \] となる。
ストレステンソルのトレースレス性
スカラー場とLagrangianはどちらもスカラーなので共形変換に対して次の変換則を持つ。 \[ \phi(x)\rightarrow \phi(x')=\phi(x)+\epsilon^\mu(x)\partial_\mu\phi(x), \]\[ \mathcal{L}(x)\rightarrow \mathcal{L}(x')=\mathcal{L}(x)+\epsilon^\mu(x)\partial_\mu\mathcal{L}(x). \] よって共形変換のNoetherカレントは次で表される。 \[ j^\mu_\epsilon =\epsilon^\nu(x)\left( \pdv{\mathcal{L}}{(\partial_\mu\phi)}\partial_\nu\phi(x) -{\delta^\mu}_\nu\mathcal{L}(x) \right) ={T^\mu}_\nu(x)\epsilon^\nu(x). \] ここで$T^{\mu\nu}$はストレステンソルであり、これは並進対称性から得られるNoetherカレントである。 ここで$\epsilon^\mu(x)$は共形座標変換のKilling方程式を満たす関数である。 すると、次が成り立つ \[ \begin{aligned} 0=\partial_\mu j_\epsilon^\mu =&\partial_\mu(T^{\mu\nu}\epsilon_\nu) =T^{\mu\nu}\partial_\mu\epsilon_\nu\\ =&\frac{1}{2}T^{\mu\nu}(\partial_\mu\epsilon_\nu+\partial_\nu\epsilon_\mu) =\frac{d}{2}T^{\mu\nu}(\partial\cdot\epsilon)\delta_{\mu\nu} =\frac{d}{2}(\partial\cdot\epsilon){T^\mu}_\mu, \end{aligned} \] ここでストレステンソルの保存則と対称性、Killing方程式を使った。 よって共形対称性を持った理論ではストレステンソルはトレースレスとなることが分かる。
トレースレス性を複素座標で表すと次のようになる \[ 0=g^{\mu\nu}T_{\mu\nu} =g^{\bar{z}z}T_{\bar{z}z}+g^{z\bar{z}}T_{z\bar{z}} =2(T_{\bar{z}z}+T_{z\bar{z}}). \] よって、対称性から$T_{\bar{z}z}=-T_{z\bar{z}}=0$が分かる。 また、保存則から \[ 0=\partial_\mu {T^\mu}_\nu dx^\nu =2(\bar{\partial}T_{zz}\dd z +\partial T_{\bar{z}\bar{z}}\dd \bar{z}), \]
が得られる。よって \[ \bar{\partial}T_{zz}=\partial T_{\bar{z}\bar{z}}=0 \] より$T_{zz}$は正則、$T_{\bar{z}\bar{z}}$は反正則となる。 ここから次のように表す。 \[ T_{zz}=T(z),~~~T_{\bar{z}\bar{z}}=\bar{T}(\bar{z}). \] 共形不変性の保存カレントをこれで表すと次にように書ける。 \[ j^\epsilon_z=T_{zz}\epsilon^{z}=T(z)\epsilon(z) ,~~~ j^\epsilon_{\bar{z}}= T_{\bar{z}\bar{z}}\epsilon^{\bar{z}}=\bar{T}(\bar{z})\bar{\epsilon}(\bar{z}). \]
量子共形場理論
量子場の微小変換は、変換の保存チャージ演算子との同時刻交換子によって生成される。 \[ \delta_\epsilon\phi(x)=[Q_\epsilon,\phi(x)]_{\text{s.t.}}. \] これは正準交換関係から導かれる。 (関連:対称性) 今、時空が Euclidean であるために虚数が取り除かれている。 共形対称性の保存チャージは保存カレントの時間成分の空間積分によって得られる。 ここで複素座標での空間方向は円周方向に対応するので \[ Q_\epsilon=\int_{-\infty}^{\infty}\dd x^1 j^\epsilon_0(x) =\frac{1}{2\pi i}\oint\left( \dd z T(z)\epsilon(z)+ \dd\bar{z}\bar{T}(\bar{z})\bar{\epsilon}(\bar{z}) \right), \] となる。 よって \[ \delta_\epsilon\phi(z',\bar{z}')= \frac{1}{2\pi i}\oint\left( \dd z [T(z)\epsilon(z),\phi(z',\bar{z}')]+ \dd\bar{z} [\bar{T}(\bar{z})\bar{\epsilon}(\bar{z}), \phi(z',\bar{z}')] \right), \] ここで同時刻交換子のみを考えるため、時間順序積をとったもののみが残る。 複素座標では$|z|$が時間方向なので、これを$R$積で表すと積分は次のようになる。 **Ginsparg, p.20; \[ \begin{aligned} \oint\dd z[A(z),B(w)]_\text{s.t.} =&\underset{|z|=|w|}{\oint}\dd z(A(z)B(w)-B(w)A(z))\\ =&\underset{|z|=|w|-\delta}{\oint}\dd z RA(z)B(w) -\underset{|z|=|w|+\delta}{\oint}\dd z RA(z)B(w)\\ =&\oint_w\dd z RA(z)B(w). \end{aligned} \] よって積分は$w$での極を拾ってくる。 今後は$R$を書かずに暗にこの順序積を取っていることにする。 primary場の変化分と結びつけると、正則部分は \[ (h\partial\epsilon(z)+\epsilon(z)\partial)\phi(z,\bar{z}) = \frac{1}{2\pi i}\oint_z \dd w \epsilon(w)T(w)\phi(z,\bar{z}), \] ここで、留数定理 \[ f(z)=\frac{1}{2\pi i}\oint_z\dd w\frac{f(w)}{w-z}, \]\[ \partial f(z)=\frac{1}{2\pi i}\oint_z\dd w\frac{f(w)}{(w-z)^2}, \] ここから積分が次のように書ける。 \[ (h\partial\epsilon(z)+\epsilon(z)\partial)\phi(z,\bar{z}) = \frac{1}{2\pi i}\oint_z\dd w\epsilon(w) \left( \frac{h\phi(z,\bar{z})}{(w-z)^2}+ \frac{\partial\phi(z,\bar{z})}{w-z}+\cdots \right). \] よって$T\phi$の演算子積展開(operator product expansion; OPE)が次のように決まる。 \[ T(z)\phi(w,\bar{w})= \frac{h}{(z-w)^2}\phi(w,\bar{w})+ \frac{1}{z-w}\partial\phi(w,\bar{w})+\cdots, \] 非正則部分も同様。 ここで最低次係数にはprimary場のweight $(h,\bar{h})$が来る。 一般にストレステンソルとのOPEから共形weightが読み取れる。
ストレステンソル$T$自身とのOPEは一般に次の形となることが後に分かる。 \[ T(z)T(w)= \frac{c/2}{(z-w)^4}+\frac{2}{(z-w)^2}T(w)+ \frac{1}{z-w}\partial T(w)+\cdots. \] ストレステンソルは古典的には$h=2$の変換性を持つはずだが、 量子効果により-4次の項が出て変換性のズレが現れている。 この時の$c$をcentral chargeと呼ぶ。
masslessスカラーの例
masslessスカラーの理論を考える。 \[ S=\frac{1}{2\pi}\int d^2x (\partial_0 X \partial_0 X+\partial_1 X \partial_1 X) =\frac{1}{\pi}\int d^2z \partial X\bar{\partial}X. \] ここから運動方程式は \[ \partial\bar{\partial}X=0, \] よって場を微分した $\partial X(z),\bar{\partial} X(\bar{z})$ が正則(反正則)であることが分かる。
次に、経路積分量子化から場の二点関数の接触項の値を得る。 経路積分の処方によると、 Euclidean 時空で場の演算子期待値は次で与えられる。 \[ \expval{\mathcal{O}}=\int\mathcal{D}X\exp(-S[X])\mathcal{O}. \] 経路積分における境界項が消えることから、次のように二点関数を計算することができる。 \[ \begin{aligned} 0=&\int\mathcal{D}X\frac{\delta}{\delta X(z,\bar{z})}\exp(-S[X])X(w,\bar{w})\\ =&\int\mathcal{D}X\exp(-S[X]) \left(\delta^2(z-w)+\frac{1}{\pi}\partial\bar{\partial}X(z)X(w)\right)\\ =&\delta^2(z-w)+\frac{1}{\pi}\partial\bar{\partial}\expval{X(z)X(w)}. \end{aligned} \]\[ \frac{1}{\pi}\partial\bar{\partial}\expval{X(z)X(w)}=-\delta^2(z-w). \] ここで次の微分方程式を思い出す \[ \partial\bar{\partial}\ln|z|^2=2\pi\delta^2(z), \] これは二次元のPoisson方程式とその解である。 なぜなら、$z\neq 0$の時は$\partial\bar{\partial}\ln|z|^2=\partial\bar{\partial}(\ln z+\ln\bar{z})=0$から満たしており、 またデルタ関数の係数については、原点から半径$R$の領域で積分して \[ \int \dd^2z \partial\bar{\partial}\ln|z|^2 = 2\int_R \dd^2x \frac{\nabla^2}{4} \ln|x|^2 = \oint_{\partial R} \dd s \vec{n}\cdot\nabla\ln r =\frac{2\pi R}{R}=2\pi \] と決まる。 これを用いると、 \[ \frac{1}{\pi}\partial\bar{\partial}\expval{X(z)X(w)} =-\frac{1}{2\pi}\partial\bar{\partial}\ln|z-w|^2. \] よってこの関係式を積分することにより、二点関数の接触項は次のように書ける。 \[ \expval{X(z,\bar{z})X(w,\bar{w})}\sim -\frac{1}{2}\ln|z-w|^2 =-\frac{1}{2}\left( \ln(z-w)+\ln(\bar{z}-\bar{w}) \right) \] 運動方程式から、場は正則部分と反正則部分に分けて書くことできるので、 場と二点関数について次のように表せる。 \[ X(z,\bar{z})=\frac{1}{2}(x(z)+\bar{x}(\bar{z})), \]\[ \expval{x(z)x(w)}\sim-\ln(z-w),~~~ \expval{\bar{x}(\bar{z})\bar{x}(\bar{w})}\sim-\ln(\bar{z}-\bar{w}). \] これらの場はlog発散を持ち、primary場では無い。 一方$z,w$でそれぞれ微分してやると \[ \expval{\partial x(z)\partial x(w)}\sim-\frac{1}{(z-w)^2} \tag{5.1} \] となりこれはprimary場である。\cite{ginsparg}
ここで、ストレステンソルを計算すると \[ {T^\mu}_\nu=\pdv{\mathcal{L}}{(\partial_\mu X)}\partial_\nu X-{\delta^\mu}_\nu\mathcal{L}, \]\[ {T^z}_z={T^{\bar{z}}}_{\bar{z}}=0,~~~ {T^z}_{\bar{z}}=-\frac{1}{\pi}\bar{\partial}X\bar{\partial}X,~~~ {T^{\bar{z}}}_z=-\frac{1}{\pi}\partial X\partial X, \]\[ T_{zz}=T_{\bar{z}\bar{z}} =-\frac{1}{2\pi}(\partial X\partial X+\bar{\partial}X\bar{\partial}X), \] 正則部分と分ければ \[ T_{zz}(z,\bar{z})= \frac{1}{4\pi}(\partial x(z)\partial x(z) +\bar{\partial}\bar{x}(\bar{z})\bar{\partial}\bar{x}(\bar{z})), \]\[ T(z)\equiv-\frac{1}{2}\partial x(z)\partial x(z), \] と書くことにする。 * *Ginsparg, p.22, (2.17); Polchinski, p.43, (2.3.15); 符号や係数にいまいち納得いかない部分がある。 しかしながら、二点関数の接触項(5.1)式から、この値は発散してしまう。 これをうまく取り扱うために次の正規順序積(normal-order)を用いる。 これは演算子積の接触項は全て二点関数の発散からくるとして、その分の寄与を取り除く処方である。 \[ \nord{A_1A_2\cdots A_n} =A_1A_2\cdots A_n-\text{(all contraction)}, \] ここでcontractionとは、次のようなものとなる。 \[ A_1^\bullet A_2 A_3^\bullet A_4\sim\expval{A_1A_3}A_2A_4, \]\[ A_1^\bullet A_2^\circ A_3^\circ A_4^\bullet\sim \expval{A_1 A_4}\expval{A_2 A_3}, \] 上付きの記号で二つの演算子を繋いだ部分がcontractionであり、 その部分は二点関数期待値の発散部分に置き換わる。(c数になる。) 場の理論での生成消滅演算子に対する正規順序積も、演算子積の発散を取り除く意味では同じ振る舞いとなっている。 \[ N[a_pa^\dagger_q]=N[a^\dagger_qa_p+\delta(p-q)]=a^\dagger_qa_p. \] これを用いてストレステンソルを定義することにする。 \[ \begin{aligned} T(z)\equiv -\frac{1}{2}\nord{\partial x(z)\partial x(z)} =&-\frac{1}{2}\lim_{z\rightarrow w} \left[ \partial x(z)\partial x(w)-\partial x^\bullet(z)\partial x^\bullet(w) \right]\\ =&-\frac{1}{2}\lim_{z\rightarrow w} \left[ \partial x(z)\partial x(w)+\frac{1}{(z-w)^2} \right]. \end{aligned} \]
ストレステンソルを定義できたので、まず$T\partial x$のOPEを行う。 全体がnormal-orderされた項は接触項を含まないので、 結局、可能な全てのcontractionをとったものが接触項の寄与となる。 \[ \newcommand{\px}{\partial x} \begin{aligned} T(z)\px(w)=& -\frac{1}{2}\nord{\px(z)\px(z)}\px(w)\\ =&-\frac{1}{2}\left[ \px^\bullet(z)\px(z)\px^\bullet(w)+ \px(z)\px^\bullet(z)\px^\bullet(w)+\cdots \right]\\ =&-\expval{\px^\bullet(z)\px(w)}\px(z)+\cdots =\frac{1}{(z-w)^2}\px(z)+\cdots, \end{aligned} \] ここで$\partial x(z)$同士のcontractionは$T$の時点でnormal-orderをとっているので考えない。 $\partial x(z)$を$w$の周りで展開すれば \[ T(z)\partial x(w)= \frac{1}{(z-w)^2}\partial x(w)+\frac{1}{z-w}\partial^2 x(w)+\cdots, \] ここから、$\partial x$は共形weight$(1,0)$のprimary場であることが分かる。
同様に$TT$のOPEを行うと \[ \newcommand{\px}{\partial x} \begin{aligned} T(z)T(w)=&\frac{1}{4}\nord{\px(z)\px(z)}\nord{\px(w)\px(w)}\\ =&\frac{1}{4}\big[ \px^\bullet(z)\px^\circ(z)\px^\bullet(w)\px^\circ(w)+ \px^\bullet(z)\px^\circ(z)\px^\circ(w)\px^\bullet(w)+\\ &\px^\bullet(z)\px(z)\px^\bullet(w)\px(w)+ \text{(3 permutations)}+\cdots \big]\\ =&\frac{1}{4}\left[ 2\expval{\px(z)\px(w)}\expval{\px(z)\px(w)} +4\expval{\px(z)\px(w)}\px(z)\px(w)+\cdots \right]\\ =&\frac{1/2}{(z-w)^4}-\frac{1}{(z-w)^2}\px(z)\px(w)+\cdots, \end{aligned} \] $\partial x(z)$を$w$の周りで展開して \[ T(z)T(w)= \frac{1/2}{(z-w)^4}- \frac{1}{(z-w)^2}\partial x(w)\partial x(w)- \frac{1}{z-w}\partial^2 x(w)\partial x(w)+\cdots, \] $\partial T(w)=-\nord{\partial^2 x(z)\partial(z)}$なので \[ T(z)T(w)= \frac{1/2}{(z-w)^4}+ \frac{2}{(z-w)^2}T(w)+ \frac{1}{z-w}\partial T(w)+\cdots, \] よって-4次の接触項をもつため$T$はprimary場ではなく、 今の場合central chargeは$c=1$となっている。